日本人のご先祖様は肉や魚を食べて生活していました
先日、NHKスペシャル『人類誕生』の第3集「ホモ・サピエンス ついに日本へ!」が放送されましたね。かつて日本列島に北ルートと南ルートから渡ってきた人々の話だったのですが、今回も興味深い内容でした。
その中で日本人のご先祖様がマンモスやシカなどの動物を食べ、縫い針で動物の毛皮でコートを作り、極寒に耐えて北海度のほうから日本へ来ることができたことを放送していました。
南ルートから日本へやってきたご先祖様は、暑いので毛皮のコートを作る必要がなかったせいなのか縫い針は見つかっていないそうです。
そのかわり、魚をつかまえるための釣り針が見つかったそうですよ。いずれにしても、日本人のご先祖様はかつて肉や魚を食べていたんですよね。
さて、私たち日本人のご先祖様は間違いなく肉食をして命をつないできたわけですが、未だに根強いのが「脂肪悪玉説」です。
つまり「糖質は悪くない、肥満や糖尿病の原因は糖質ではなく脂質であるッ!」というわけです。よっしーはこの説、半分は正しくて半分は間違っていると思います。
日本糖尿病学会が正式に推奨している食事法は、脂質を減らしてタンパク質はほどほど、エネルギーの50~60%を糖質から摂取するという食事です。
しかし残念なことに、この食事で多くの方の糖尿病が「治った」とか「糖尿病合併症を100%防げた」というデータは存在しないのです、これまでものすごーく不摂生しまくっていた高度肥満の方を除けば。
今回は、本当に悪いのは脂質なのか、それとも…?という問題についてじっくりと考えてみることにいたしましょう。
ライオンやトラは肉ばかり食べているのになぜ健康?
ライオンやトラは肉食動物です。可愛い猫も彼らと同じく肉食動物の仲間ですよね。で、動物園では大人のライオンは毎日4~5キロもの肉を食べているそうです。
野生では毎日獲物が手に入るわけではないのが普通なので、週に1度はエサを与えない日を作っているそうですが、それでも週に24~30kgもの肉を食べるんですね。
ライオンがたまに草を食べるのは、ペットの猫と同じく消化の悪い物、変な物を食べて吐き戻しをしたくなった時、胃に入った体毛が固まって毛玉になった時これを吐くためだそうです。
基本的に肉ばかり食べている彼らがなぜ動脈硬化や糖尿病にならないのでしょう?だって「脂質が動脈硬化や肥満、糖尿病の原因なのだ!」という人たちがいらっしゃるのに。
答えは簡単で、肉食動物は肉をたくさん食べても脂質は必要な分だけ吸収して、それ以外は便から体外に排出される仕組みが備わっているからです。
だからライオンは肉を食べても病気になりませんが、もともとその機能が必要なかった草食動物に同じことをしてみると、たちまち高脂血症になってしまいます。
草食動物のウサギにコレステロールを多く食べさせると動脈硬化になってしまうのは当然の事なんですね。本来食べるべきではないモノを無理やり食べさせるわけなので…
「違う!野生のライオンは大量に脂質を摂取してもそれ以上にエネルギーを消費しているから大丈夫なだけだ!」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしそれでは、ちっとも肥満ではないにも関わらず脂肪肝や動脈硬化、糖尿病を発症するヒトが結構たくさんいらっしゃることの説明ができません。
あっ!肉と一緒に糖質を大量に食べるのはヒトだけだ…
先ほど「糖質は悪くない、肥満や糖尿病の原因は糖質ではなく脂質であるッ!」という説のことを半分は正しくて半分は間違っていると書きましたよね。
これはどういうことかと言いますと、肉食寄りの雑食動物であるヒトがライオンやトラのように肉を食べる場合、特に何も悪いことは起こりません。
なぜ完全な肉食動物ではないかと言うと、ヒトは進化の過程であえて体内でビタミンCを合成する能力を捨てたと考えられるので、その分だけは野菜から摂取する必要があるからです。
ビタミンCは果物にも含まれていますが、品種改良して糖質をめちゃくちゃ多くした現代の果物を食べなくても、糖質の少ない葉物野菜からちゃんと確保できますからね。
さて、肉と糖質の少ない野菜を少々食べても何ともありませんけど、もし大量の糖質を一緒に食べると何が起こるでしょうか?
脂質単体で食べた場合、上のライオンの話で説明したようにある一定の量を超えると小腸からの吸収はストップします。
しかし脂質と大量の糖質を同時摂取すると追加インスリンの作用で脂質のリミッター機能がうまく機能せず、摂取した脂質はほとんど吸収されてしまうのだそうです。
現代人はさほど運動もしないので、肝臓に蓄えられたグリコーゲンはいっぱい、余った糖質は全てインスリンによって中性脂肪に変えられ、大量に摂取した脂質もすべて余ることになります。
こうして行きどころのなくなった中性脂肪は、皮下脂肪として蓄えきれない分は内臓脂肪、異所性脂肪になってしまうわけですね。
野生のライオンは肉はたくさん食べますが、当時にお米やパンを食べたりは絶対にしません。野良猫もそうです。彼らは「脂肪は体に悪いから」と言ってわざわざ獲物の脂身を残したりしないと思いますが。
でもヒトに飼われている猫は2型糖尿病になってしまいます。その原因のひとつは、多くの安価なキャットフードにはカサ増しのために安価な穀物が混ぜられているからじゃないでしょうか?
糖質と脂質の同時大量摂取は確かに健康に悪いかも
糖質と脂質を同時に大量に摂取するのは、現代のヒトだけです。このことがもっとも生活習慣病の発症に良くないのは事実でしょう。
しかし残念ながら、糖質だけを大量に摂取しても糖尿病になる人はいます。日本でもかつて藤原道長が2型糖尿病になり、最後は網膜症でほとんど目が見えなくなったことで有名です。
戦国武将の織田信長は甘い菓子が好きでやはり糖尿病になり、糖尿病神経障害があったのではないかと言われていますよね。当時の日本で、どのような「欧米食」を食べていたのでしょうか?
江戸時代の庶民は肉はめったに食べられず、白米ならお腹いっぱい食べられる生活を送っていました。しかし当時すでにガンや糖尿病合併症について詳細な記録が残されています。
つまり高糖質×高脂質食はもっとも健康に良くないが、高糖質×低脂質食もやはり健康に良いとは言えないわけです。よっしーが長年やっていたのは後者でした。
高糖質×低脂質食に関しては「太らないからいいでしょ」とか「私は糖質をしっかり食べても耐糖能が高いので血糖値が上がりません」という話をしばしば聞きます。
しかし太る能力が低い、すなわち余分な糖質をインスリンの作用で中性脂肪に変える能力が低い人はむしろ太ってもいないうちから脂肪肝や糖尿病になりやすいのです。
また、普段お酒をまったく飲まない人がたまに飲むと少量ですぐに酔ってしまいますが、毎日飲んでいる人は体が「アルコールという毒に対して警戒し身構えている状態」なのでなかなか酔いません。
これは「耐アルコール能が高い状態」であるとも言えますけど、毎日飲んでいるうちに肝臓の限界をとうとう超えてしまい、いつか肝臓が壊れますよね。糖質も同じです。
お宅のワンちゃんやネコちゃんはお酒を飲まないでしょう?間違いなくあなたより「耐アルコール能」は低いですよね。でも彼らはアルコール中毒には…ならないですよね♪
いつも脂質だけが悪者にされて気の毒です
カナダ北部などの氷雪地帯に住んでいた民族のイヌイットは、私たち日本人と同じ黄色人種です。彼らはかつて、生肉や生魚を中心とした食事でした。
気候上農業ができないので、野菜や穀物を食べることはほとんどなかったのですが、彼らには心臓病や糖尿病などがほとんどなかったのです。
ところが文明が入り込み、ファーストフードなどを食べるようになると、彼らは生活習慣病にかかるようになってしまいました。
「イヌイットにかつて病気が少なかったのは魚をたくさん食べていたせいだ」と主張する方も多いですが、肉はたまにしか食べず青魚ばかり食べていたよっしーはなぜ糖尿病になったのでしょうか?
結局、すべての答えは「糖質(主食)と一緒に食べるかどうか」だと思いますよ。糖質と脂質の合わせ技で生活習慣病が増えたのに、なぜかいつも脂質だけが悪者にされてしまうんですね。
戦後の日本で平均寿命がグンと伸び、長生きするが故のさまざまな病気にかかる人も確かに激増しました。
もしかしたら、糖質は今まで通り食べながら脂質の摂取量が増えたことが良くなかったのかもしれません。みんなが大好きなものって大抵糖質と脂質の組み合わせでしょう?
いま生活習慣病で苦しんでいる方のほとんどは、糖質制限をしてきた方ではなく普通に糖質と脂質を一緒に食べていた方ではありませんかね?
あるいは「私は極端な糖質制限は体に悪いと思うので、ご飯も適度に食べます」というようなゆるゆる糖質制限?をなさっている方がいずれそうなってしまう可能性も否定できません。
あなたならどうしますか?ライオンやかつての日本人のご先祖様やイヌイットのような食事を選ぶか、それとも…すぐに答えは出ないかもしれませんが、すべてはあなたが自分で決めることなのです。