牛脂はヒトの体温より融点が高いけど大丈夫??
ここのところ筋トレの話が続いたので、今回はちょっとお休み。このところ金森重樹先生の「牛脂をしっかり食べる」糖質制限系のダイエットが大流行していますね。
よっしー自身は特に意識して牛脂を食べているわけではなく、野菜を炒めるときにスーパーのお肉コーナーで無料でもらえるあの小さな牛脂を利用する程度です。
それでもTwitterのフォロワーさんたちには金森式ダイエットを実践している方が多いので、よっしーも常にこのダイエットには注目しています。
金森式ダイエットでは牛脂をしっかり食べるそうですが「牛脂はヒトの体温よりずっと融点が高いので、ヒトの体内では溶けずに排水溝のぬめりのように消化管にこびりついてしまうのではないか」という意見があったそうです。
こういうことを言われるとなんとなく不安になってしまいますよね💦それで実際はどうなんだろう?と、ひとつじっくりと考えてみることにしました。
うーん、そんなことを言われるとなんだか気になっちゃうよなぁ。
なかなか体の中をのぞくわけにはいかないけど、考えてみましょうか。
水牛を食べるライオンはどうだろう?
脂防の融点(溶け始める温度)は牛脂が40~50℃,豚脂が33~46℃,馬脂が30~43℃,鶏脂が30~32℃,魚油は常温で溶けた状態です。牛などの反芻動物は皆、脂の融点が高いです。
牛脂は融点が高いですが、豚脂はヒトの体温で溶けやすいのでお弁当に入れて冷めた状態で食べることも多いハムやソーセージなどに利用しやすいのですね。
ヒトの体温は36.5~37.0度ぐらいなので、牛脂はこれよりかなり融点が高いことになりますよね。本当に大丈夫なのでしょうか?
牛の体温は38.5~39.5度でヒトよりもやや高めですけど、牛脂の融点より低めです。それでも別に問題は無いわけです。なんだか不思議な気がしますが…
そして肉食動物のライオンはバッファロー(水牛)も食べますけど、ライオンの体温は牛よりわずかに低いです。鶏は体温が40度を超えていますが、他の多くの動物はヒトよりわずかに高い程度です。
難しい理屈は抜きにしても、これを見るだけでも「ヒトが牛を食べても何の問題もない」ということは想像できるのではないでしょうか。
「ライオンが自分の体温より融点が高いバッファローの脂を食べちゃって病気になって死んだ」なんて事件、聞いたことがないですから💦
脂肪が消化される仕組みは?
そもそも脂肪を摂取した後、「溶ける」から消化吸収されるわけではありません。融点が低い種類の油はヒトの体内に入ると液状になるかもしれませんが、固体だろうと液体だろうと油はそのままでは水に溶けません。
肝臓で「胆汁」が作られ、胆のうに貯蔵されます。食事をすると胆のうから胆汁が出て来て脂肪と混ざり、乳化されます。下の図は日本食肉消費総合センター様のサイトからお借りしました。
そして消化酵素リパーゼの働きで「モノグリセリド」「脂肪酸」「グリセロール」などに分解されます。グリセロールは水に溶けやすいのでそのまま小腸から吸収されますが、モノグリセリドと脂肪酸は胆汁酸の働きにより「ミセル」という非常に小さい分子に取り込まれてから吸収されます。
乳化とは、水と油のように本来混ざりあわないもの同士が均一に混ざり合う状態です。マヨネーズの油と酢がずっと均一に混じり合ったままでいられるのは、卵が油と酢の間をとりもつからです♪
固体状だろうと液体状だろうと、油はすべてそのままでは水となじみません。「牛脂はヒトの体温よりずっと融点が高いので、ヒトの体内では溶けずに排水溝のぬめりのように消化管にこびりついてしまうのではないか」というご心配はごもっとです。
しかしヒトの食道は台所の排水溝とは違います。粘膜の細胞は生きています。それにヒトの体のかなりの部分がタンパク質と脂質で出来ていて、成人女性なら体の20~30%前後は脂肪なわけです。
牛脂をそのまま生でかじる人ばかりだとは思えません。たいてい、スープとか炒め物など加熱した状態で食べませんか?ほぼ液体のまま、すぐに胃に行っちゃうと思います♪
脂肪よりも、異常に辛いものや熱すぎるものを飲み食いするほうがよほど消化器に悪そうなものです💦そして、どんな種類の油だろうと小腸で乳化されなければ消化されません。
野生動物たちの自然な食事を見習う
牛脂は確かに融点が高めですけど、牛の肉を食べる動物たちの体温は牛脂の融点よりも低いです。さらに、牛さん自身の体温も牛脂の融点よりも低いです。
青魚は確かに健康に良いものだと思いますけど「魚の油は常温で液体なので血液サラサラ~」などという表現は何かズレています。食べた油がそのままの形で血液中に流れていくと思っていませんか!?
とはいえ、野生動物たちは脂身の部分だけを選んで大量に摂取するような食べ方はしませんので、人によってはお腹を壊したりすることもあるのかもしれません。
これはよっしーの個人的な意見にすぎませんけど、脂質を大量に摂取して「糖質への依存」を断ち切ることに成功したら、その後は適量の脂質(かなり個人差がありそう)摂取に切り替えた方がいいのかも。
また野生動物たちは肉を食べますが、同時にご飯やパンなどの糖質を食べることもありません。このあたりが「いろいろと気を付けているはずなのにヒトばかりがいろいろな病気になる」理由のひとつではないでしょうか?
オレたちも野生ではネズミや昆虫を食べているんだけど、それで糖尿病や高脂血症などの生活習慣病にはならないんだぞ。
脂肪=悪って思う人は未だに多いけど、本当に悪いのは脂肪なのか?糖質と一緒に食べるからじゃないのか?って考えてみるといいわね。