ケトン体って何でしょうか?
糖質制限ダイエットをなさっている方なら、少なくとも1度は「ケトン体」について聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
食事からの糖質の摂取量がかなり少ない時、体は体脂肪を燃やしてエネルギーにします。このとき「ケトン体」という物質ができます。脳のニューロンはケトン体もエネルギーとして利用できることが分かっています。
ケトン体が体内に増えるとケトアシドーシスという危険な状態に陥るのではないかと思い込んでいる方もいらっしゃるようですが、「糖尿病性ケトアシドーシス」はケトン体が増えることで起こるのではありません。
糖尿病性ケトアシドーシスは何らかの理由でインスリンの作用がほとんど欠落してしまい、血糖はたくさんあるにも関わらず体はブドウ糖をエネルギーとして利用できない状態になります。
ブドウ糖をエネルギーとして利用できないから、体はケトン体をいっぱい作って必死に何とかしようとしている状態です。それなのに「ケトン体が悪いに違いない」とは誤解もはなはだしいです。火事を発見して必死に消火活動にあたっている消防士を「お前が放火したんだろう!」と疑うようなものですね。
インスリンがきちんと作用している状態では、ケトーシス(ケトン体がたくさん出ている状態)になってもアシドーシス(血液が酸性に傾く状態)にはなりません。
よっしーのような、ややインスリン分泌能力が落ちている糖尿病患者でも、何年も前からずっとケトーシスになっていますが一向になんともありません。
念のため申し上げますが「血液が酸性に傾く」というのは非常事態です。食べ物に影響されて簡単になるものではありません。血液のpHは非常に狭い範囲内で調整されています。
糖質制限するとケトン体の数値がめちゃくちゃ高くなるのでびっくりする人が多いらしいな。
糖質制限するとケトン体が出るのは当然なのに「正常値をはみ出しているから大変だ!」と大騒ぎしちゃうのね。
ケトン体が出ているかどうか調べたい
体内でブドウ糖の代わりに体脂肪がエネルギーとして使われているときケトン体が多く出るので、「糖質制限ダイエット中にケトン体が出る」というのは、糖質制限ダイエットがうまく出来ていることのひとつの指標になります。
ケトン体がきちんと出ているかどうかは専用の尿検査紙で自宅で調べることができます。尿にはほとんどケトンが出ていなくても、血液中にはちゃんとケトンがある場合もあります。
血液を調べたい場合は、プレシジョンネオという血糖測定器に専用のケトン体検査用の測定電極をセットすることで測定することができます。
ケトン体を測定できる測定器本体は楽天市場でも買えますが、消耗品である測定電極はSMBGサポートさんのサイトで購入できます。
購入の際はくれぐれも、普通の血糖測定用のセンサーチップと間違えないように気を付けてくださいね。同じ本体でケトン体も血糖値も測定できるので💦
きちんと糖質制限しているのにケトン体が出ないんだけど?
よっしーの場合、糖質制限ダイエットを開始してから3年近く経ちますが、常にケトーシス状態になっています。自宅でケトスティックを使用すると紫色になりますし、病院の尿検査でも常にケトン(3+)になります。
しかし中には「きっちりと糖質制限しているのにケトン体が出ない」という方がちらほらいらっしゃるそうです。
一般的には、きちんと糖質制限ダイエットが出来ていればケトン体は出るとされます。断食を行うと、さらにケトン体は出やすくなります。
でも、体質的にケトン体が出にくい方と言うのはいらっしゃるようですね。糖質をきちんと制限していても、たんぱく質の摂取比率が高すぎるとケトン体が出にくくなる方もいらっしゃるそうです。
そのような場合は、ややたんぱく質の摂取量を減らして脂質の摂取量を増やすことでケトン体が出やすくなるんだそうですよ。1度に大量に食べるのではなく少量ずつ回数を多く食べるのもテです。よっしーはたんぱく質を多めに摂取しないと調子が悪くなります💦
また江部康二先生によれば、糖質制限食を続けて3ヶ月~6ヶ月が経過すると、血中のケトン体が従来の基準値より高値のままでも、尿中には出なくなる方も多いそうです。
これは心筋や骨格筋が効率よくケトン体を利用するようになることと、腎臓での再吸収が高まることによると考えられるそうです。体内ではちゃんとケトン体が作られているけれど、尿に出るほど余ってはいないということですよね。
またケトン体にはアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸、アセトンの3種類があり、その75%をβ-ヒドロキシ酪酸が占めています。多くの場合、尿ケトン検査紙はアセト酢酸しか検出できませんので、βーヒドロキシ酪酸がちゃんと出ていても尿検査ではイマイチ出ていないように見えることもあるんですよ。
何のためにケトン体を出したいのか?
ケトン体高値を目指すのもいいですが、そこには何らかの目的があるはずです。ただケトン体の数値が高くなればそれだけ痩せるというわけでもありません。
難治性てんかんの方や認知症の改善目的、がん治療など、病気の治療のために血中ケトン体濃度を高くキープしたい方の場合は、体内で効率よくケトン体を増やすためにMCTオイルやココナッツオイル、ココナッツミルクなどを利用するといいでしょう。
これらの病気の方の場合、とにかく血中のケトン体を増やすことが大切です。それが自分の体脂肪由来であろうと外から摂取したものであろうと大きな差はありません。
しかしダイエットが目的の場合は、あくまでも「血中ケトン体を増やす」ことではなく「自分の体脂肪をエネルギーとして多く使う」ことが大事です。
MCTオイルなどを使いすぎて血中ケトン体を増やしても、自分の体脂肪があまり使われていないようではダイエット効果はないでしょう。
ダイエットが目的の場合、大事なのは「血中ケトン体を増やすこと」ではなく「自分の体脂肪をどんどんエネルギーとして使うこと」ですよね。
タイプ別・食事方法
ひと口に糖質制限ダイエットと言っても、その人の体型や体質により、最適な食事方法は変わってきます。
・太っていてケトン体が出やすい人…いくらケトン体がしっかり出ていても、それ以上に脂質を摂りすぎていれば痩せません。ゆっくりと体重が減っていく程度に、脂質の摂りすぎにも注意します。
・太っていてケトン体が出にくい人…ケトン体回路をしっかり回して自分の体脂肪を燃焼させるために、MCTオイルやココナッツオイルを適量摂取します。しかし、その他の脂質は摂りすぎないようにしましょう。
・痩せていてケトン体が出やすい人…体重がどんどん減ってしまわないように、良質の脂質とタンパク質もしっかり食べましょう。
・痩せていてケトン体が出にくい人…ケトン体回路を回し、過剰な糖新生を防ぐためにもMCTオイルやココナッツオイル、その他の良質な脂質をしっかり摂取します。タンパク質も不足しないようにします。
「痩せていてケトン体が出にくい人」は案外、盲点なのではありませんか?ケトン体が出にくい体質でも、活発に糖新生が行われれば体重はどんどん減りますので、単に痩せればいいやと言う場合は気が付きにくいのです。
糖新生が過剰になると空腹時血糖値が高めになったり筋肉が減りやすくなります。これは糖尿病患者さんの場合はより顕著になりますね。気を付けてください。
農耕以前の人類は肉や魚をたくさん食べていたと思いますが、わざわざ皮や脂身だけを取り除いて食べていたとは考えにくいです。そのため「ケトン体回路が回らずに糖新生だけがどんどん行われる」ということはなかったのでは?
現代では、プロテインなどを利用してタンパク質ばかり摂取することもできますけど。仮に体重を落としたい場合でも脂質を減らしすぎると良くないとされるのは、こんな理由もあるのです。
自分の体脂肪をどんどん燃やしている状態を継続させるのが大事なんだよね。
そうよ、うっかり糖質をたくさん摂取しちゃうとケトンちゃんはすぐどこかへ行ってしまうから気を付けましょうね。