日本人はお米だけ食べていれば他に何も要らない!?
昨日「日本人の体質にはお米が合うので、白米さえ食べていればおかずは食べなくてもいいんですよ」という話を小耳に挟みました。
なんでも「米にはタンパク質も各種ビタミンミネラルもすべて含まれているのです」「必須アミノ酸もバランスよく含まれています」とのことで。
確かに昔のサザエさんの原作を読んでいると、ほとんどお米ばかりでおかずはほんのちょっぴりという食事シーンも登場します。当時の日本人が長生きだったかどうかは疑問ですが…
誰がどんな食事法を実践するのも自由だと思いますが、「だから糖質制限ダイエットは絶対にダメなんだ!」などと批判されては困りますよね。
そこで厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年度版」を見ながら「白米を1日にどれぐらいの量食べれば日本人の食事摂取基準を満たせるのか」を考えてみることにします。
何しろ厚生労働省が「日本人の健康のために」決めた数字ですからねぇ…今回の記事では、カロリーSlism様のデータを使用することにします。
日本人なら…なんて言われたら何となくそれっぽい気がしますよね。
そうね。でも日本人ならみんな同じ体質なのかっていう疑問もわいてくるし…
日本人の各種栄養素の摂取量の目安は?
では見ていきましょう。今回は「30~49歳までの妊娠していない女性」を基準にして考えていきたいと思います(妊婦さんや授乳中の方、体格の大きい男性はさらに必要量が増えるものがあります)。
・タンパク質…推奨量50g/日
・オメガ6系脂肪酸…目安量8g/日
・オメガ3系脂肪酸…目安量1.6g/日
・食物繊維…目標量18g/日以上
・ビタミンA…推奨量700μgRAE/日
・ビタミンD…目安量8.5μg/日
・ビタミンE…目安量5.5mg/日
・ビタミンK…目安量150μg/日
・ビタミンB1…推奨量1.1mg/日
・ビタミンB2…推奨量1.2mg/日
・ナイアシン…推奨量12mgNE/日
・ビタミンB6…推奨量1.1mg/日
・ビタミンB12…推奨量2.4μg/日
・葉酸…推奨量240μg/日
・パントテン酸…推奨量5mg/日
・ビオチン…推奨量50μg/日
・ビタミンC…推奨量100mg/日
・亜鉛…推奨量8mg/日
・銅…推奨量0.7mg/日
・マンガン…推奨量3.5mg/日
・ヨウ素…推奨量130μg/日
・セレン…推奨量25μg/日
・クロム…推奨量10μg/日
・モリブデン…推奨量25μg/日
・鉄…月経なしの女性で推奨量6.5mg/日、月経有りの女性で推奨量10.5mg/日(※過多月経の女性を除くという記述あり)
・カルシウム…650mg/日
・マグネシウム…280mg/日
・カリウム…目安量2000mg/日
白米を1日に何グラム食べればよいのか?
上の表はカロリーSlism様のサイトから引用させていただいた、白米ご飯茶わん1杯(150g)の栄養価です。私が糖尿病で入院していた時の病院食のご飯も1回につき150gでした。
まず白米だけをどれだけ大量に食べても、ビタミンCはほとんど摂取できないことが問題ですよね。ヒトは進化の過程で体内でビタミンCを合成する機能を失い、食物からビタミンCを補給することを選びましたから。
そしてカルシウム650㎎摂取するためには、ご飯を茶わん145杯も食べなければいけないようです!マグネシウムもご飯を茶わん27杯食べなければ足りません。
ビタミンB群の摂取基準はあまりにも少なすぎると私は個人的に思うんですが、この際その是非は置いておくとして。糖質代謝に必要なビタミンB1はご飯を茶わん37杯食べなければいけません。これだけ食べたらさらにB1が余計に必要になりそうです。。。
特に妊娠初期に不足すると赤ちゃんに「神経管閉鎖障害」が起きるリスクが高まる葉酸の必要量を満たすためにはご飯を茶わん53杯も食べる必要があります。
過多月経ではない女性に必要な鉄を満たすためには、ご飯茶わん70杯分が必要です。私のようにもともと過多月経の女性はどうしたらいいのでしょうか。。
健康体であれば正常値を維持するために必要な量の糖は肝臓で「糖新生」によって作ることができますが、体内で合成できないから食事から補給しなければいけない各種の栄養素はどうします?
残念ながら「白米オンリー」は現実的ではなさそうです
「日本人ならお米が合う」というのは何となくそうかなぁと思います。確かに、小麦で腸の調子が悪くなる方はたくさんいらっしゃいますから、主食を食べるなら小麦よりも米が良いというのは理解できます。
しかし「白米さえ食べていれば他には何もおかずを食べる必要はない」というのはあんまりにも乱暴だと言わざるを得ません。
日本では「江戸わずらい」といって、白米ばかり多く食べる江戸の人たちがビタミンB1不足で脚気(かっけ)に苦しみました。
明治末までに毎年6500人から15085人の日本人が脚気によって死亡したとされています。これは非常に重大なことだと思いませんか?
また15~18世紀の大航海時代には、200万人の船乗りがビタミンC不足による壊血病で死亡したと言われています。当時の航海のときの保存食にはビタミンCが含まれていなかったからです。
白米ばかり食べていたイメージのある江戸時代の庶民も、白米だけ食べていたわけではなく魚や野菜、みそ汁などはある程度食べていたそうです。
また昔の日本で脳出血が多かったのは、過酷な労働による肉体的ストレスに加えて栄養状態が悪いことにより血管が脆かったせいではないかと言われています。
食事は個人の自由とは言え、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と照らし合わせて考えてみると、「白米オンリー」の食事を長く続けることはあまり現実的ではないかもしれませんね。
お米だけでは絶対に足りない栄養がありますもんね。
宗教じゃないんだから、なにかひとつのものに固執しなくてもいいわよね。必要な栄養はきちんと摂らないとね。